第25回 薬害を引き起こしたサリドマイドの意外(?)な領域での復活
サリドマイド製剤は、1950年代後半に催眠鎮静薬として発売され、妊婦のつわり予防やその鎮静作用などにより胃腸薬にも配合された薬でした。
しかし、副作用の血管新生を妨げる作用などから強い催奇性をあらわし、妊婦が摂取した場合、胎盤関門を通過し胎児に移行します。
胎児の成長の過程では、諸器官の形成のため、細胞分裂が必要となり、これには血管新生が必要です。胎児に移行したサリドマイドの成分により、血管新生が妨げられ結果、四肢の欠損、視聴覚などの感覚器の障害、心肺機能の障害など先天異常が発生しました。
絶対引き起こしてはいけない薬害については、その原因と対処法をしっかりと熟知するべきです!
日本においては、1960年代に出生児に先天異常が発生したことに対して、国や製薬会社を被告として、損害賠償訴訟がおこり(1970年代に和解が成立)、世界的にも副作用情報の収集体制整備などが見直されるきっかけになりました。
このように、痛ましい薬害を引き起こしたサリドマイドですが、近年、多発性骨髄腫などのがんや難病に対する治療法の選択肢となっています。これは、薬害を引き起こす要因となった血管新生を妨げる作用などを利用することで、がん細胞の増殖を抑える効果などが期待できるからです。
サリドマイド(及びサリドマイドに類似した化学構造を持つ薬剤)には、NK(ナチュラルキラー)細胞やT細胞など免疫系の増強・調節作用なども期待できると考えられています。 もちろん、催奇形性に注意することは大前提で、避妊や薬剤の保管などに関する安全管理手順に沿って治療が行われています。
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