第9回 薬との相互作用があるシメチジン、本当は使いやすい薬?

薬の作用に対して、他の薬や食品などが影響を及ぼし、作用が増強したり減弱したりすることを一般的に相互作用と呼んでいますが、この相互作用に深く関わるのが薬物代謝酵素と呼ばれる体内物質です。 薬物代謝酵素はその名の通り、体内で薬物を代謝することによって薬を体外に排泄するなどの役割を果たします。
薬の中には、薬物代謝酵素の働きを強めたり弱めたりするものがあります。

薬との相互作用のあるシメチジンは、意外な活躍をしているのです。

胃酸分泌抑制薬のシメチジンは、薬物代謝酵素に影響を与える代表的な薬の一つです。

シメチジンはH2受容体拮抗薬(通称:H2ブロッカー)と呼ばれる種類の薬で通常、消化性潰瘍や逆流性食道炎などの治療で使われ、医療用医薬品だけでなく一般用医薬品の成分としても使われています。シメチジンは他の薬の作用に対して影響を与える可能性があり、主に薬物代謝酵素であるCYP(シトクロムP450)を阻害することに起因します。(その他、胃酸分泌抑制作用により他の薬の吸収に影響を与えることなども考えられます)

他の薬に影響を与えるということで一見すると使い勝手が悪いようなイメージを持つかもしれませんが、臨床においてシメチジンは、 先に挙げた消化器疾患以外にも意外な活躍をしています。

例えば、石灰沈着性腱板炎という肩などの痛みに対して使われることがあります。これはシメチジンなどのH2ブロッカーに炎症の原因となるカルシウムの再石灰化を防ぐ効果が期待できるからです。他にもじんましんの時に抗ヒスタミン薬に対する補助的治療薬として使われる場合があるなど幅広く活躍しています。

腕試し問題

下記の文章を読んで、○×で答えてください!問題文をクリック(タップ)すると回答が開きます。

腸で溶けるように造られている腸溶錠は、シメチジンやファモチジンなどの胃酸を抑える薬と一緒に飲んでも問題ない。
答えは「×」胃酸分泌抑制作用をあらわす薬によって、胃内pHが上昇し、腸溶錠の吸収などに影響を与える可能性が考えられます。
病院から処方された抗菌薬(抗生物質)を服用している場合、胃を荒らさないために念のためスクラルファートを含む胃薬を飲むことは有益である。
答えは「×」有益であることも考えられるが、もしも処方された抗菌薬(抗生物質)がニューキノロン系抗菌薬やテトラサイクリン系抗菌薬である場合、スクラルファートに含まれるアルミニウム(Al)によって、これらの抗菌薬の吸収が低下し、抗菌作用が減弱する可能性などの不利益があらわれることも考えられます。
抗凝固薬で治療を受けている人にはさらなる健康増進のため青汁などのビタミンKが含まれている食品を勧めるべきである。
答えは「×」もしも抗凝固薬がワルファリンカリウムであった場合、ビタミンK含有食品の摂取により抗凝固作用が減弱する可能性があり非常に危険です。
シメチジンはある特定の薬物代謝酵素を阻害するため、同じ分子種で代謝される薬物の併用には特に注意が必要となる。
答えは「○」シメチジンはシトクロムP450(CYP)のうち、主にCYP2D6やCYP3A4といった分子種を阻害するため、これらの酵素により代謝される薬物との併用には特に注意が必要となります。
アルコールと薬を一緒に摂取した場合、薬の作用が著しく増強される可能性もあり危険である。
答えは「○」薬の中でも特にトリアゾラム(睡眠導入剤)などはアルコールの影響を受けやすい薬とされています。