第19回 花粉症治療薬と胃薬、関わる体内物質はどちらもヒスタミン?

植物の花粉がアレルゲンとなりくしゃみ、鼻みず、目のかゆみなどのアレルギー症状を引き起こす花粉症。特に、冬から春にかけてのスギ花粉は多くの人の悩みの種となっています。

花粉症の主な治療としては、フェキソフェナジンやエピナスチンなどの抗ヒスタミン薬と呼ばれる薬があり、処方薬だけでなく市販薬としても活躍しています。 抗ヒスタミン薬は、アレルギーなどを引き起こす体内物質ヒスタミンの働きを抑えることで効果をあらわす薬です。もう少し詳しくみていくと、主にヒスタミンの作用の受け皿となるヒスタミンH1受容体を阻害することで効果をあらわします。

いよいよ花粉症が猛威を振るう季節です。花粉症対策としても薬の知識を身につけましょう!

ヒスタミン受容体には、H1受容体以外にもいくつかのタイプがありますが、中でもヒスタミンH2受容体が比較的よく知られています。 H2受容体は、主に胃酸分泌などに関わるヒスタミン受容体で、これを阻害することで過度な胃酸分泌を抑え消化器症状を改善する薬がフファモチジンなどのH2ブロッカー(H2受容体拮抗薬)と呼ばれる薬です。

関わる体内物質が同じでも、作用する受容体が異なることで、片や花粉症などのアレルギー疾患の治療薬、片や胃薬というように主な効果や目的が異なるのは薬の作用の違いをあらわす一例といえます。

ちなみに、ファモチジンなどのH2ブロッカーには、H1受容体など他のヒスタミン受容体への効果も少ないながらもあると考えられています。そのため、臨床における蕁麻疹などの治療では、フェキソフェナジンなどの抗ヒスタミン薬だけで効果が十分に得られない場合に、ファモチジンなどのH2ブロッカーを補助的治療薬として使うこともあります。

腕試し問題

下記の文章を読んで、○×で答えてください!問題文をクリック(タップ)すると回答が開きます。

ケトチフェン、エピナスチンなどはアレルギー疾患の治療薬として使われ主に体内物質のロイコトリエンの働きを抑える作用をあらわす。
答えは「×」ロイコトリエンなどの物質に対する作用も確認されてはいますが、主となるのは体内物質ヒスタミンを抑える作用であり、一般的に抗ヒスタミン薬と呼ばれます。
抗ヒスタミン薬は体内の神経伝達物質ヒスタミンである働きを抑える薬のため、飲み薬しかない。
答えは「×」内服薬(飲み薬)以外にもジフェンヒドラミンなどを主成分とした外用薬があります。
フェキソフェナジンなどの抗ヒスタミン薬は花粉症だけでなくアレルギー疾患の治療薬として使われる場合もある。
答えは「○」
ラニチジンなどのH2受容体拮抗薬(通称、H2ブロッカー)は胃潰瘍などの消化性潰瘍の治療薬であり、医療用医薬品(処方薬)としてだけ使われている。
答えは「×」ラニチジン、ファモチジンなどはOTC医薬品(市販薬)の成分としても使われています。
ファモチジンは神経伝達物質アセチルコリンの働きを抑える作用により、消化管の過剰な運動を抑え下痢等を改善する効果をあらわす。
答えは「×」アセチルコリンの働きを抑えるのはロートエキスなどの抗コリン薬と呼ばれる薬です。